脳科学から考える良いデザイン

PMしていると、「UIは2つのパターンがありますが、どちらが良いですか?」「この入力制限ロジックをいて入力精度を高めようと思いますが、どう思いますか?」とデザイナーから質問され、判断に迷うときがあります。
 
ABテストで判断できると好ましいですが、細かいデザイン一つ一つにテストはできません。今回はそのような状況で判断したい時の一つの指針を脳科学の観点から考えたいと思います。
 
PMをされていて、かつページデザインなどの具体的な部分を看ている方々にとって役立つ内容になっています。
 

結論

人には不快情動と快情動がある

良いデザインは不快情動を起こさない(つまり、脳にストレスを感じさせない)

 

人には不快情動と快情動がある

外的な変化に応じて身体に起きる変化を”情動”と言います。例えば、野原を歩いていて、目の為を黄色と黒色の小さな物体が飛んできたとしましょう。私たちは反射的に頭を屈めて身を縮めます。身を縮めてからその物体を注視すると、ハチだと分かりました。そして「ああ、怖かった!」という言葉が出ます。
 
この「物体が飛んできた事を認識する」⇒「身を縮める」が情動です。
 
他の例として、偶然目の前に綺麗な女性が現れた時に心臓の鼓動が速くなる事も情動です。つまり、情動は無意識下で生み出されます
    
この情動は悲しみ,恐れ,怒りなどの不快情動と喜び,愛などの快情動に分けられます。そして、私たちは快情動を得るか、不快情動を避ける為に行動します。例えば、道を歩いていると焼き鳥の匂いがした時に思わず視線を向ける行動は快情動を得る為です。奥さんが起こった時に思わず目を背けるのは不快情動を避ける行動です(笑)。
 
私たちは快情動を得るか、不快情動を避ける為に行動する。これは重要なインサイトです。
    

良いデザインは不快情動を起こさない(つまり、脳にストレスを感じさせない)

 
”不快情動を発生させない”デザインが良いデザインと言えます。箸を例にあげましょう。箸を使ってご飯を食べる時、”箸ってどう握ればいいんだろう?”とわざわざ考えません。意識を使う事もなく箸を親指と人差し指で掴み、中指を添え、テレビを見たり人と話しながら、ご飯を箸で掴みます。
 
”箸でご飯を掴む”という行為に意識を向ける事はありません。私たちは箸をまるで身体の一部のように扱え、そこに不快情動はありません(表面がツルツルした食べづらい食べ物を除き)。箸は不快情動を生み出さない為、私たちにとって良いデザインと言えます。
    
箸が手を汚さずに食事という活動を実現させるように、良いデザインは身体の一部のように人の活動をサポートし、その活動範囲を拡張させます
 

三回以上もボタンを押させるな。 スティーブ・ジョブズ

 

スティーブ・ジョブズのプロダクトへの拘りも、不快情動の同じ文脈で捉える事ができます。

    
PMとしてデザインに迷い時があります。そして思わず、「どっちでも良いかな~」と言いたくなります。定量データがないとベターなデザインを判断するは難しいです。
 
そのような時は、”脳にストレスを感じさせないデザインとは?”と問いかける事をお勧めします。そう考えると、たとえ簡素であってもユーザにストレスを感じさせないデザインの方が、ハイエンドで見栄えの良いデザインよりもベターな場合もあるでしょう。
   
今回は脳科学における情動の観点から執筆いたしました。読んで頂き、有難うございました。